産業医・ストレスチェック等のサポートを東京都港区にて行っております、産業保健サービスです。
前回のブログでは、「メンタルヘルス不調から復職した社員への接し方」についてご紹介いたしました。
本日は「衛生委員会の目的から実務」を掲載いたします。
担当者の皆様から、よく「衛生委員会の立ち上げ方法がわからない」「委員会運営方法の助言やアドバイスが欲しい」というお問い合わせをいただきます。
そこで衛生委員会について、その目的から実務・申請方法等ご紹介いたします。
衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に設置が義務づけられています。
なぜ、衛生委員会を設けなければならないのでしょうか。一言でいうと、労働災害防止のための取り組みを会社と労働者が協力し、一緒になって行うことが、衛生委員会設置の目的です。
毎年、多くの労働災害が発生しています。平成29年も死亡災害、休業4日以上の死傷災害の発生件数はともに前年を上回り、それぞれ978人(5.4%増)、120,460人(2.2%増)となっています。死亡災害は3年ぶり、死傷災害は2年連続で増加しました(厚生労働省報道・広報より)。国も様々な対策に取り組んではいますが、労働災害を防ぐには、日々会社ごとに自主的に危険な芽を摘み、防止していくしかありません。
歴史をさかのぼると、工場などの現場において、働く人の身に立った環境が整っていなかったため、労働災害や健康被害にあう人が多数存在しました。そのような労働者の安全と健康を守り、会社側も労働者の危険や健康に対する意識を高め、安全に働ける環境を整備するため、労働者が現場の報告を行い、会社とともに改善策を話し合う場が必要になったのです。
衛生委員会とは、健康と安全に関して、労働者の意見を会社の措置に反映させるための制度です。死亡事故のような重大な事故を起こさないよう、労働者と会社が一体となって再発防止に取り組むことが目的です。
50名以上の事業場では開催頻度は毎月1回以上と定められています。
※ 総括安全衛生管理者・衛生管理者・産業医は選任することが必要になった日から14日以内に選任し、選任後は遅滞なく所轄の労働基準監督署に選任報告書を提出しなければなりません。
衛生委員会の構成メンバーについて、詳しくみていきましょう。
社内に総括安全衛生管理者がいる場合は、総括安全衛生管理者が議長となります。総括安全衛生管理者は衛生管理者の資格を持っていなくても構いません。会社の規模によって総括安全衛生管理者がいない場合は、人事部長・総務部長・工場長・支店長などが会社から指名されます。議長は委員の互選で選出してはいけません。
また、法律的に明記はされていませんが、弊社が労働基準監督署へ確認した指導内容として、議長は労働者側と会社側の中立の立場である必要があることから、衛生管理者と兼任しないことが望ましいとされています。
業種の規模等、詳しいことは以下を参照ください。
厚生労働省サイト > 総括安全衛生管理者について
衛生管理者の資格を持っている者で、人事・総務担当が資格を取ることがほとんどのようです。常時50人以上の労働者がいる事業場では、その職場専属の衛生管理者を選任しなければなりません。
衛生管理者はストレスチェックの実施事務従事者になることも多く、産業医や労働者との連絡の窓口になることが多いため、人望があり、職場のことをよくわかっている人で、一般職員(役職者でない方)が望ましいとされています。
専門家としての意見を述べる、会社側のメンバーです。産業医の出席は義務ではありませんが、構成メンバーとして出席することが望まれます。
ここでよくいただく質問として、産業医が毎回出席する必要があるのかというものがありますが、出席は必須ではありません。構成メンバーとして産業医は必須ですが、参加に対しては任意となっているのが実情です。ただ、欠席が恒常化していると問題であり、そういった場合は「名義貸し産業医」と呼ばれてしまいます。
また、衛生委員会での審議事項として「事業者は、政令で定められた規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない」と定められています。産業医は会社側にあたりますが、出席はするけれども、助言もしないで黙っているだけの産業医も、交代を検討した方がよいかもしれません。
毎月の出席が難しい場合は、労働安全衛生法の改定により産業医の巡視回数が条件付きで月1回から2ヶ月に1回以上へと変更可能になりましたので、衛生委員会とあわせて巡視を行っている場合は、産業医の出席を2ヶ月に1回とすることも可能になりました(その場合の注意点は、この項の最後に記載します) 。
会社が指名します。話し合われた内容をすぐに運用できるようにするため、役員のような役職者が望ましいとされています。
当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名します。
構成メンバーの人数比は議長を除き、会社側・労働者側が同数である必要があります。例えば、会社側として衛生管理者と産業医、衛生に関する経験を有する者で3名となった場合、労働者側として労働者代表と他2名の計3名が委員となります。人事担当者などは労働者側としないことが望ましいとされています。
【産業医の巡視回数を2ヶ月に1回以上にする場合の注意点】
◇ 事業者から産業医に毎月1回以上、以下の情報が提供されていること。
◇ 事業者側の同意が必要です。産業医側の独自判断で、月1回以上から2ヶ月に1回以上に変更することは不可とされています。
法令の改正を細かく言うと…
● 少なくとも毎月1回行うこととされている産業医による作業場等の巡視について、事業者から毎月1回産業医に所定の情報が提供されている場合であって、事業者の同意がある場合には、産業医による作業場等の巡視の頻度を、少なくとも2月に1回とすることを可能とする。
● 事業者は、各種健康診断の有所見者について医師等が就業上の措置等に関する意見具申を行う上で必要となる労働者の業務に関する情報を当該医師等から求められたときは、これを提供しなければならないこととする。
● 事業者は、毎月1回以上、一定の期日を定めて、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間の算定を行ったときは、速やかに、その超えた時間が1月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報を産業医に提供しなければならないものとする。
衛生委員会を設ける際、産業医と衛生管理者の選任報告書を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。どちらも、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく報告書を労働基準監督署に提出しなければなりません。
もしも怠った場合は、労働安全衛生法(産業医:第13条第1項・衛生管理者:第12条第1項)違反により、それぞれ「50万円以下の罰金」が科せられるとされています。
なお、衛生管理者を選任することができないやむを得ない事由がある場合で、所轄都道府県労働局長の許可を受けたときは選任が免除されます。
この許可は、衛生管理者の突然の死亡・退職等特殊な事由により衛生管理者が不在となってしまったが、その充足に期間を要することがやむを得ないと認められるときで、特定の者を衛生管理の業務に従事させることとし、かつ、おおむね1年以内の期間に限って行うことなどの要件が設けられています。
産業医の場合も、探しているが見つからないといった場合にも、適用になる可能性があります。しかし、そういった場合、まずは弊社までご相談ください。
● 産業医選任報告書の記入方法については、こちらをご覧ください。
● 衛生管理者選任報告書の記入方法はこちらをご覧ください。(東京労働局の記入例)
● 『衛生管理者・産業医の選任の特例の許可申請書』はこちらからダウンロードしてご利用ください。
衛生管理者の許可申請書として利用する場合、「選任できない理由」の欄は「試験勉強中のため、〇月頃までに選任予定です」といったような内容をご記載ください。この選任予定時期は、せいぜい半年先が限度というのが実情のようです。
いかがでしたでしょうか?
産業保健サービスでは、衛生委員会の構築をゼロからサポートしております。
立ち上げから運営方法、職場の環境改善のフォローまで、企業様の声にお応え致します。
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