ストレスチェック実施後、結果の活用方法について

産業医・ストレスチェックに関するサポートを行っている東京都港区の産業保健サービス株式会社です。

「ストレスチェック」実施を検討中の企業様の場合、多くが
「どのように実施するのか?」「事前準備は?」と、ストレスチェックを実施することに焦点をあてがちです。
ですが、ストレスチェックは実施することが重要なのではなく「実施後の結果活用」に意味があります。

本日のブログでは、ストレスチェック実施後の結果をどのように活用していくかをご紹介いたします。

ストレスチェックの結果は、どう活用すべきか?

ストレスチェックは常時50人以上の従業員を使用する事業場には実施が義務付けられていますが、一定規模のまとまりごとの集計、分析(組織分析や集団分析と呼ばれています)は努力義務とされています。

しかし、国は集団分析の結果を職場の環境改善策に活用することが望ましいとしています。

職場の環境改善策は、次の2つに分けることができます。

例えば、「女性よりも男性のストレス度合いが高い」という組織分析の結果が得られたとします。その場合は部署ごとに対応するよりも、全社的な取り組みを行った方が効果的です。
このように、属性に由来する課題については、経営陣や人事担当者が主導して施策を講じることになります。

一方、組織別の課題としては、「企画管理部門のストレス度合いが高く出ている」といったようなケースが挙げられます。これは特定の部署や部門の傾向を示しているので、全社的な対応ではなく、各組織の責任者が主導して、その部署・部門で解決することが望ましいといえます。

具体的には、組織分析に用いることが国から推奨されている「仕事のストレス判定図」で見てみましょう。この判定図から得られる結果を1つの指標として、ストレスが高い部署に属する従業員へのヒアリングや職場巡視を行うことが挙げられます。

特に、ストレスが高い部署の従業員に対するヒアリングは、各自が負担や不満を感じている度合いが高いことから、ヒアリングをすることで、それだけでストレスを緩和させる効果があります。

ヒアリング後に、改善計画を検討し、意義と目的・目標を明確にして、具体的な取り組み内容を策定します。ヒアリング内容を計画に反映させると、推進しやすくなります。
また、計画策定の際は、ストレスが低かった部署へもヒアリングを行い、ストレスが低い部署はどういった施策をとっているのか、なぜストレスが低いかを知ることで、該当の部署へ役立てられる部分がないかを検討し、取り込める内容は併せて盛り込むことも効果的です。

それでは、職場の環境改善策として代表的な例をご紹介します。

1)長時間労働の削減

一般的に、長時間労働が常態化している従業員にこそ、高ストレス者が多いとされています。
長時間の労働によって睡眠時間などのプライベートな時間が減少すれば、肉体的な疲労が蓄積し、精神面で追い詰められた状態になります。そうなれば当然、心身ともにストレスの度合いは高まります。
従業員が睡眠時間や余暇などの休息時間を十分に確保できるよう、長時間時間の削減に取り組むことが、メンタルヘルス対策の第一歩となります。

勤務体系の見直し
従業員の休息を確保する目的として「長時間労働の削減」を掲げたとしても、やみくもに働く時間を制限しようとすると、そこには弊害が生じます。

仕事を持ち帰って自宅で働く、タイムカード打刻後に残業を続けるなどのサービス残業が発生したり、仕事の質やモチベーションが低下する等の悪影響が出ることは、労務管理的にも問題であり、避けなければなりません。

勤務体系の見直しを行うことにより、本当に必要な時間・場所に必要な労働力が足りているか、社風として長時間働くことを良しとする傾向にないか、残業することを前提として朝から働いていないか、ダラダラ残業することが常態化していないか、早朝・深夜労働による過重な負担が特定の人に集中していないか、昼休みは規定の時間きちんと取れているか等の点検を行いましょう。
ピックアップされた課題を元に、改めて適正な勤務体系を検討していけば、長時間労働に関わる問題は改善しやすくなります。
有給休暇取得の促進
従業員に休暇を取ってもらうことも、長時間労働の削減につながります。
そのための施策として、会社が有給休暇の取得を奨励することが挙げられます。
しかし、特に中小企業においては頭が痛い問題かもしれません。

国は、第4次男女共同参画基本計画の中で、2020年までに有給休暇の取得率を70%にすることを目標に掲げています。この流れも視野に入れつつ、使い勝手の良い有給休暇制度となるよう、終日や半日単位の取得だけでなく、時間単位でも取得できるよう就業規則を改定したり、年度の初めに従業員に年間の取得希望日を提出させ、計画付与を調整するなど、工夫を凝らす必要があります。
2)個人の負担軽減

「属人化」という言葉をご存知でしょうか?
「属人化」とは、企業において、ある業務についてその人にしか分からない状態にあることを指します。

その場その場で対応が異なる不確定要素が多い業務や、高度な知識が必要とされマニュアル化できないことがやむを得ない業務など、一部特殊な仕事もあるにはありますが、仕事の属人化が続く限り、個人の負担は軽減しません。
業務については可能な限り「標準化」「見える化」し、特定の個人に負担が集中しないようにすることが肝心です。

割り振りの再考
誰に負担がかかっているか、また組織としてはどこの部門(部・課・グループ・チーム)に業務上の負荷がかかっているかが判明したら、その部分の業務分担を再考することで、状況の改善を図ることができます。

対個人では前述の通り、仕事が属人化しないよう、従業員間にノウハウを共有する意識を醸成した上で、業務を標準化・見える化する等の作業が必要になります。
人員補充
特定の個人や部署に負担が偏っている原因が「人手不足」にある場合、たとえ上記のような施策を講じたとしても、効果はあまり期待できないでしょう。
昨今では、この人手不足による長時間労働とそこからくるメンタルヘルス不調が多く見受けらます。

また、先述した「仕事の属人化」についても、人が足りずに担当者が多忙であることから、マニュアル化する時間がとれないといったことも往々にしてあります。
その場合には適切なところにマンパワーを投入し、業務にあたる人員を増やすことが最善の策となります。

繁忙期と閑散期が明確にある業務であれば、繁忙期のみ非正規雇用社員を活用することで、人件費の継続的な高騰を避けることができます。

3)人材育成

どんな仕事に取り組むにせよ、また、生きていく上でもストレスはつきものです。どんなにストレス軽減のために職場環境の改善を図ったとしても、ある問題から受けるストレスの程度には、個人の捉え方や考え方が大きく影響します。

昨今、長い会社生活の中で従業員がストレスと上手く折り合いをつけていけるよう、人
材育成の一環として、ストレスマネジメントに関する研修を実施する企業が増加しています。

特に最近は、Googleを初めとした米IT企業にて「マインドフルネス」という宗教色を一切排除した瞑想が、ストレス軽減や集中力の向上に一定の効果を上げていることから、日本でも大手企業を中心に広がりを見せています。
従業員ひとりひとりがストレスへの対処法や、ストレス耐性を高める術を身につけることで、組織全体を強靭にしていくことが可能になります。

また、別の人材育成として、次世代が育ちやすい社内教育制度を充実させることも挙げられます。

4)職場環境の見直し

職場は、従業員が1日の大半を過ごす場所です。従業員が安心かつ快適に過ごせるよう、職場環境の見直しを行うことで、従業員のストレス軽減につなげることができます。

物理的環境の改善
空調や照明、音、1人あたりのスペース等の基本的な環境が、現状、従業員にとって快適な状況と言えるでしょうか?ひとつひとつは小さな違和感でも、日々の積み重ねによって大きなストレスとなることがあります。

仕事場が従業員にとって過ごしやすい空間となるよう、物理的な環境について、アンケートをとってみるのもよいでしょう。整理整頓をして、安全・快適に過ごせることは労働災害の防止にもつながります。
風通しのよい職場づくり
上司や同僚に相談しやすい雰囲気作りや、部活動・各種行事の催しのような普段接点のない部署の人たちとの連携作り、社内・社外相談窓口の周知等に努めることで、悩んだ時に従業員が誰かに話せる環境づくりが必要です。
5)評価制度の見直し

日本企業の評価制度は、職能資格制度がとられていることが多く、役職と基本給(職能給)の指標となる職能資格から等級が決定されているようです。

ここに労働時間を加味して賃金が算出されるケースがまだまだ多いように見受けられます。
また、初めから時間外労働の発生を見越して給与体系が策定されていることもあり、このような場合、十分な収入を得るには長時間労働が避けられず、過重労働による精神的ストレスは増していくばかりです。

従業員のストレスを軽減し、モチベーションを上げて働いてもらうために、能力や成果を適切に反映される制度作りを進めるか、もしくは副業を認めることも一つの案かもしれません。

 

このように、職場環境の改善は、作業の標準化・見える化のような関係者で行うものから、部門の再編や人の採用、就業規則の改定・評価制度の見直しなど、経営層の判断、決定がものをいう部分など、大小さまざま施策があります。

特に人の採用などは、人件費の増加など経営上マイナスに感じられる部分もあるでしょう。
しかし、メンタルヘルス不調による休職者の発生から、周りの従業員への負担が増加し、更なる休職を招きやすいこと、また過労死を防止する意味などから、会社として職場環境の改善に取り組むことは、社会的信用度の向上にもつながり、ひいてはそれが経営基盤を強化することにもつながります。離職率も低下するでしょう。

職場環境の改善を図ることは、どこまでやるかという問題もあり、一筋縄ではいかないかもしれませんが、ぜひ組織分析結果を材料として活用してください。

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